浸透テクノロジーQuSomeの発明物語

薬学博士ブライアン・ケラー

薬学博士ブライアン・ケラー

薬物伝達システム(ドラッグデリバリー)の研究が始まったばかりの1980年中頃から終わりにかけて、私は、リポソームが特効薬となる、という研究報告書や文献に魅了されました。リポソームは、1960年代初期に英国の生物学者であり、医師であるアルセ・バングハムによって開発され、1980年代までは、生体膜の研究に使用されていました。それまで、輸送手段としてのリポソームの利用は、様々な応用が研究の途中にありましたが、皮膚科学やスキンケアへの応用を模索する研究者は、ごくわずかでした。私は、リポソームが人毛の直径の1/50という非常に小さな小胞であることと、成分を皮膚の中へ届けることができる点に大変興味を持ち、この道の研究に入っていきました。

Liposome

幸運にも、1993年に私と仲の良い同僚がマイケル・メゼイ博士を紹介してくれました。メゼイ博士は、カナダ、ノバスコシア州のハリファックスにあるダルハウジー大学の大学教授でした。彼は、スキンケア製品にリポソームを応用した最初の科学者で、皮膚へのリポソームの元祖と言われています。私は、彼の研究文献や、有効成分を最大限に引き出すことのできるリポソームの構造に対する深い知識に興味を持ち、公私ともに彼との長い付き合いがはじまりました。彼は、リポソームとそのスキンケアへの応用について、あらゆる事を教えてくれました。最も有効なリポソーム構造と使用方法を学んだ後、私は、麻酔薬のリドカインを4%配合したリポソームジェルを開発しました。これは、LMX4と呼ばれる皮膚の麻酔薬として有名になりました。この製品は、米国で最初のリポソームを使用した外用薬品でした。

リポソームを皮膚麻酔薬への応用することに成功しても、テクノロジーに対してマイナス要因があることはわかっていました。リポソームのスキンケア製品への使用は、簡単ではありません。長年の研究と経験が要求されます。このため、他の科学者や技術者にリポソームを使用した製品の生産方法を教えるのは効率が悪く、困難でした。

また、開発した製品を大量生産するのは、困難で高度な技術と技能が必要でした。また、原料のリン脂質は、コストがかかり、特別な処理が必要です。また、生産されたリポソームは、長期間経つと不安定になるため、最低2年の使用期限が定められているスキンケア製品にはむきませんでした。このような理由から、多くの有効成分をいろいろな製品に応用できる新世代のリポソームの開発をしたい、と思いました。

Qusome

QuSomeの発見は、リン脂質に代わる特別な脂質の発見から始まりました。水を加えると自然に小胞体(カプセル)が形成されるという特殊な脂質です。この脂質は、QuSomeの構成要素なのです。私は、リポソームを構成しているリン脂質に似た、独自の脂質を見つけるために昼も夜も研究室で過ごしました。

ついに、正しい組み合わせと分子の構成を発見した時、その美しく金色に輝く(私にとっては、金のような)脂質を精製して、水と混ぜました。そして、白く濁った脂質ができたのです。白く濁るというのは、良い兆候でした。なぜなら、それは、小さな粒子が混ざっていることを意味するからです。しかし、これらの粒子は皮膚やカラダに有効成分を届けることができるのか、この脂質が「特効薬」を含んでいるのか自分自身に問いかけました。

私は、この脂質と水の混合物のサンプルを私の友人で同僚のダン・レシック博士に送りました。その当時、彼はリポソームの研究でとても有名で、世界的な専門家として知られていました。彼は、リポソームの小さな分子を簡単に見ることができる特別な顕微鏡を持っていました。彼はキューソームを初めて見てとても驚きました。彼は私に電子メールでQuSomeの顕微鏡写真と一緒に、「これは、リン脂質ではない素材からできた、新しいタイプのリポソームです。とても素晴らしい!」というメッセージを送ってくれました。

QuSome電子顕微鏡写真

その写真を見たとき、リポソーム技術の新しい時代を感じました。水に浮かんでいる素晴らしい小さな粒子は、顕微鏡にはっきり映し出されていました。その粒子の大きさは、ナノサイズで、直径70~150ナノメートルです。ハリの先に約50個のキューソームが収まるほどの大きさですが、丈夫なためクリームやローション、ゲルに配合しても安定しています。そして、ほとんどの敏感肌に対しても優しい性質です。

ビーグレンのスキンケア製品の容器の中には、1容器あたり何十億個ものQuSomeカプセルが配合されています。QuSomeの開発は、スキンケア製品をもっと効果的で、従来のリポソームよりも肌に優しいものにする革新的な方法であることを意味していました。皆さんが想像するように、この開発に成功した時、私はとても興奮したと同時に安心しました。何年にも渡る研究と開発の結果、リポソームを作る新しい方法は、以前よりもずっと簡単になりました。新しい脂質は、従来のリポソームほどコストがかからないので、QuSomeはコスト的に安く、より小さいですが、安定していて効率的です。そして、人体に有効成分を届ける方法に改革をもたらす可能性を秘めています。

QuSomeの開発以来、たくさんの薬に応用されてきました。スキンケア製品にもこの浸透テクノロジーを使用することで、それまで肌の上に乗るだけであった有効成分を最も効果的に肌の深層部まで届けることができるようになったのです。